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そこまで考えたところで、その男は急にガシッと私のでかでかとした買い物袋をひっ掴むから、ビクリと肩が揺れる。
さすがに私も少しは怖いという気持ちがあるのだ。
「詫び、させてやるから付いてこいよ」
「ひっ……いや、ごめんなさい」
「謝ってるだけじゃ足んねぇだろ?」
そもそもなにを謝ることがあったのか自体わかっていないのに、謝っただけじゃ足りないとはなぜなのか。
金!?金か!!?
「わぁ、謝ってる女の子をゴーインに連れて行こうとしてるクズがいる」
その時、背後からかけられたその声は妙に軽くて、この状況からは似つかわしくない楽しそうな声に、この場の時が止まった。
というか、腕を掴んでいる男の人が、その人を見て固まっていた。
誰、いつの間にか私の後ろにいた人は。
私のすぐ横に並ぶその人と視線が交わると、顔を覗き込むように近付けられて、一歩足を引く。
何、近い。
黒に紫を滲ませたような艶やかな髪が、目の前で揺れた。
「キミ、絵描く人?」
「……え?」
つい、そう言葉が零れ落ちていた。
いや、決してギャグで言おうとしたわけではなくて。
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