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野村がビールを美味しそうに飲んでいる。少し早いが解放感を味わっているようだ。 「まずは人事部に直接行った方がいいかもしれませんね。北村さんのところへ先に行けばどんなふうに丸め込まれるかわからないわ」 「そんなにヒドイ人ですかね、北村さん」 「用心した方がいいですよ。温和なふりしているけど腹の中では何を考えてるかわからないタイプだと思います」 「たしかに……。京野さんの話聞いた時にはさすがにちょっと許せなかったです」 「そうですよね。柚木さんも京野さんのこと心配してました」 「柚木……アイツ、俺が京野さんの妊娠の相手だって思ってますよね」 「たぶん……」 「復帰したらアイツにだけはすべて告白します。あの夜のことも謝ってやり直したいです。許してもらえるかどうかわからないけど」 律子は胸が苦しくなる。食べ終わった食器を片付けるふりをしてテーブルから離れる。 「佐々木さんは好きな人とかいないんですか? ずっと独身だから誰かつきあってる人でもいるのかなって思って。あ、すみません、聞かない方がよかったですかね」 背中を向けたまま律子は答えた。 「ずっと思い続けている人はいます」 「そうなんですね! その人と幸せになれるといいですね!」 言葉は発せず軽くうなずいた。
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