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懐妊発覚?
予定通りに、大衆の前で改めて夫婦になった事を報告した來人。
來人の隣には、華やかな衣装見に包んだ柑奈が笑顔で手を振っている。
だが、柑奈の様子がどことなくおかしい事に気がついたのは、御羽那だった。
(まさかとは思うが……単に緊張から来るものなら問題ないのだが)
事後報告した皇帝と後宮妃の柑奈に、大衆からは温かな拍手を送られる。
その中にもちろん、花嫁候補として来た三人も同席している。
御羽那は、周りに気付かれないよう、來人の側近の従者に耳打ちをして、できる限り早めに会を終わらせるようお願いした。
理由を尋ねられて、御羽那は柑奈が余りにも緊張しすぎて顔色がすぐれないらしいと伝えた。
御羽那の言う事は絶対的なところがあるので、従者もそれ以上探りを入れるのはやめて、來人にそれとなく耳打ちをして伝えた。
「皆の者、祝福はとても嬉しく思うが、実を申せば私が緊張のあまり、体調万全ではないのだ。すまぬが、祝杯等は省略させていただきたい。必ず、皆の者との祝杯等をあげる日を設ける事を約束する。簡単な挨拶のみですまないが、皆の者に報告できた事は私は、良かったと思っている。立っているのがやっとなのだ……」
來人は、そう言うと1人掛けソファーによろめきながら、腰を下ろした。
もちろん、これは咄嗟に思いついた演技なのだが、皇帝には無理はさせられないと、従者が数人かけつけて、従者の一人が大衆を説得させていったん、解散という事になった。
部屋に二人で戻って数分と経たないうちに、御羽那が慌てた様子で部屋をノックして來人の声を聞く前に無礼を失礼しますと言い、中に入ってきた様子からただ事ではないと察した來人は、怒る事はせず、御羽那に話すよう促した。
「あの……柑奈様の様子がおかしくて気になっていたのですが……念のため、専属医を連れて来ました」
「一体どうしたというのだ?」
険しい顔をする來人に、専属医は後から説明するので、とりあえずは、奥方を寝室で簡単な診察をさせて欲しいと言う。
「柑奈に、何が起きたというのだ? 大丈夫か?」
「ちょっと胃がムカムカとしてます……横になりたいです。來人様……お許しください。多分、緊張しすぎて具合がおかしくなったのだと思います」
柑奈を支えながら、寝室に連れて行く御羽那。
「來人様は、奥の部屋でお待ちください。多分、喜ばしい報告ができるかと思いますが……」
専属医に言われた通りに、來人は奥の部屋で待機する事にした。
柑奈の、あそこまで顔色が悪いのを気にかける事ができなかった己を恨む。
來人は、トン、トン……と人差し指の爪先で円卓を突きながら、苛立ちと己を責めつつ、柑奈の身に何が起きたのか考えている。
「柑奈様、いつから月のモノが来ていないか覚えていますか?」
横になりオケに少しだけ戻した柑奈は、涙目になりながらかれこれ一月以上は来ていないと伝えた。
「少しは楽になりましたか? 少々、恥ずかしいかもしれませんが、仰向けになって両脚を膝を立てて横へ開いてくれませんか?」
専属医に言われるままに柑奈はM字開脚をしたところで、その上にふわりとした毛布をかけたのは御羽那だ。
「少しだけ身体から力を抜いてください。ほんの一瞬だけ痛いかもしれませんが、我慢してください」
専属医は手袋をはめたら、指をゆっくりと入れて押し広げる。
そして、秘めた部位の入口から少し奥へ入れて左右に動かしたらそっと指をゆっくりと抜いた。
「おそらく、妊娠なさっている可能性があります。体調がすぐれず、吐き気を催すのもそのためかと思います。脚は元に戻して大丈夫です。來人様を呼びますね」
はめていた手袋を脱いだら鞄へ閉まって、寝室から出ていくと御羽那が、柑奈の傍について背中をさする。
「あとからグレープフルーツをお持ちします。妊娠している場合、落ち着くまでは吐き気がある場合もあるので、食べ物を受け付けないかもしれません。でも、グレープフルーツはそんな時には良いと言われております」
「そうですか。オハナさんは何でも詳しいのですね」
「私も若い時は、妊娠して出産して子育ても経験済みです。ここで総合的な指揮を取るようになるまでの間に、様々な経験をしてきたのですよ。この事は内密に。來人様がお見えになりました」
御羽那は、話を途中で遮ったが柑奈には十分参考になったし、心強い。
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