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翌朝、柑奈は來人の腕の中で目を覚ました。
互いの肌と肌を重ねた温もりは、つい先ほどまで感じていた。
その余韻をもう少し味わっていたかったのに、來人は仕事があるからと申し訳なさそうに柑奈に伝え、腕枕を解くと素早く衣服を身にまとい、柑奈にはもう少しゆっくり寝ているよう伝えたら、奥の部屋へと姿を消してしまった。
肌はまだしっとりと汗で潤っていたのだが、お腹がすいたので怠い身体にムチを打って起き上がると、柑奈も衣服を身にまとった。
化粧などきれいに落ちた素顔を見られたのではないか? そんな不安をよそに奥の部屋から出てきた來人は、食事をともに取りたいと言いだし部屋食を従者に運ばせた。
「してもらってばかりで申し訳ないです……。あの……おはようございます」
「おはよう。よく寝ていたので起こすのもどうかと思っていたのだが、すまなかったな。だが、こうして食事をともにできるのは嬉しい。柑奈、私の姿を見ても驚かないでもらいたいのだが……」
そう言うと、食事を済ませてから來人は、意識を集中させて本来の姿になって柑奈に見せた。
「わあ、素敵なライオンさんですね。思った通りでした」
柑奈が言うと、來人は不思議そうな顔をしている。
「昨夜、私を抱き寄せた時、來人様の陰が何となくライオンっぽく写っていたので、予想していたのです」
柑奈が、ふわりとした笑顔で話すので、怖がっていないと判断した來人は、柑奈を妃に選んでよかったとやっと笑顔を見せてくれた。
「獣神なのだ。人ではないとわかれば逃げ帰るのではないか? それが不安だったのだが、そなたが、さほど怖がる人間はいないという事がわかって、私はホッとしている。それに柑奈の洞察力には驚かされたがな」
「私は他の動物も好きですが、ライオンは特別なのです。間近で見ても怖くはないですね。ですが、他の女性たちの方が美しいのに私で良いのですか?」
柑奈は念を押すように來人に聞いたのだが、來人は柑奈だから選んだと伝えると、再び、人間の姿になった。
こうして、獣神と人間の共存生活がスタートした。
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