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「あの……、貴女も私と同じく異世界転生組ですか?」
「異世界転生組? 言っている意味が良くわからないのだけど……どこから来たんですか?」
柑奈に声をかけられた女性は立ち止まり、クルリと向きを変えて小首を傾ける。
「えーと、私、元々違う世界にいたんです。ところが、日本という国では神様に異世界転生をさせられてここへ迷い込んだのです」
「私と同じですね。私は数日前に来ました。花嫁候補だとかで選ばれたとか……。何人の候補がいるかわからないのだけど、今のところ、私と貴女しかいないみたいで……。お城に、もしかしたらいるのかもしれませんけど。とりあえず、お城まで行きましょう」
にこやかに話す女性は、柑奈と歩調を合わせて歩き出した。
柑奈に心強い存在がいるので、少しだけ不安は消えた。
お城に入ると、部屋に案内された。
ここには人間以外の種族もいるらしくて、柑奈の世話係になった女性は、耳がケモノ耳をつけている。
顔の作りが猫を連想させられるので、猫化の種族という事にしておこう。
大人しく、必要以上に会話はしないので、柑奈から質問をすると答えてくれる。
「私は、柑奈と言います。ところで、ここで何をして生活をすればいいのですか?」
「他の花嫁候補の方々もいるので、一緒に作法とか学ばれる事になります。申し遅れましたが、私は、魔陽那と言います。これから貴女の世話係を担当する事になりました。よろしくお願いします」
「私こそ、よろしくお願いします。そういえば、先ほど、一人だけ花嫁候補の方と会いましたよ。皇帝には簡単に会う事はできないのですね。挨拶だけはしておきたいと思っていたのですが……」
柑奈は、少し残念そうに話す。
「皇帝とは、いずれはお話する機会を持ちます。今まで、何人かの女性と食事までは出来ても、その後が続いた試しがありませんので、今回が最後のチャンスだと仰ってました。この事は内密に。柑奈様、花嫁候補の方々との食事会に参加するので、衣装はこちらでお願いします」
そう言って魔陽那から、金糸の刺繍があしらわれた肩のあいたドレスを着るよう促され、今の衣装から着替えた。
「色白な柑奈様には白が大変映えますね。ヘアメイクをしましょう」
鏡台の前に柑奈を座らせると、慣れた手つきで魔陽那はナチュラルメイクを施し、ヘアスタイルも緩やかなウェーブのかかった感じに仕上げた。
「別人みたい……」
柑奈は、鏡に映った自分を見て驚いている。
「お似合いです。これから食事会が始まります。初顔合わせ程度だと思って、肩から力抜いて出来るだけ笑顔を心がけてください」
魔陽那に言われた通り、柑奈は笑顔を作るがどこかぎこちなさを自分でも感じている。
部屋を出て大広間に移動したら、先ほどの女性もいたので傍に駆け寄った。
「先ほどはありがとうございました。そういえば、まだ自己紹介してませんでしたね。私は柑奈です。よろしくお願いします」
「私、紗英。同じく日本人です。よろしくお願いします。というか、歳は近そうだと思っているのだけど、いくつですか?
ちなみに、私は18歳です」
「ほとんどタメですね。私、17歳なんですが、今度の誕生日迎えたら18歳になります」
「それならタメでいいですね。今からタメで話しましょう」
紗英と話をしていると、ぞろぞろと花嫁候補が集まって来たのか司会らしい男性が挨拶を始めたので、二人は会話をやめた。
お互い、簡単な自己紹介をしていき立食パーティーが始まった。
耳が尖った種族もいれば、ケモノ耳の種族もいて完全に別世界に来たのだと柑奈は改めて実感した。
席は決められていないので、柑奈と紗英は同席して他愛のない会話を楽しみつつ、料理を美味しくいただく。
そこへ、耳が尖った種族の女性が話しかけて来た。
「一人は心細いので、一緒に食事していいですか?」
「「はい、もちろんです」」
二人の返事がかぶった。
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