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立食パーティーは、代わり代わり、色々な女性との会話を楽しむうちにあっという間に終わりを迎えた。
出された料理は、木の実を使ったフルーツタルトとか、シチューなど柑奈がいた世界とさほど変わったものではなかったが、見た事のない木の実を使っていたのだが、とても美味しかったし、柑奈にはとても新鮮な時間に感じた。
「初顔合わせはこれにて終了といたします。次回の食事会で、いよいよ皇帝も参加なさいますので、それまでに花嫁としてのマナーなどを身につけていってください。本日はお疲れ様でした」
こうして、花嫁候補たちの食事会は幕を閉じた。
「お酒もフルーティーな感じで飲みやすくて美味しかったね」
「そうだね。初めて飲んだけど、このお酒なら飲める。ここのお城って部屋数がわからないけれど、広そうだから少し見学してみようかな」
柑奈たちはすっかり意気投合して仲良くなってしまった。
「あの……、よかったら私も一緒に見学してもいいですか?」
耳の尖った種族の女性は、柑奈たちに遠慮がちに声をかけてきた。
「もちろんです。私は柑奈です。どこから来たのですか?」
「私はエルフの国から来ました。名前はエリナです」
柑奈のとなりから紗英も、慌てて自己紹介をした。
こうして、また一人と柑奈は仲良くなるきっかけを作っていく。
他の女性たちは、見た目から大人な感じがしたので声をかけづらい。
三人は大広間から出て行くと螺旋階段を上がっていく。
吹き抜けの天井なので高く開放感が感じられる。
壁には、城主代々の肖像画が飾られている。
家族画と思われるのも何枚か飾られていて、高貴な生まれだという事が一目瞭然だ。
2階へ来ると部屋が何部屋もある。
柑奈たちも、ここの部屋に住んでいるのだが、一日中篭っている事が多く廊下ですれ違う事がないので、今回の食事会はありがたいものだった。
「階段はまだ上に続いているみたい」
そう言って上がろうとしたら、いつ来たのか背後からそれ以上は立入禁止ですよと老婆(見た目がおばあさん)の声がして、驚いて悲鳴が出そうだったがグッと堪えて、声の主を見つめると険しい顔をしている。
「すみません。ここへ来て間もないので散策してみようと話になり、ここへ来てしまいました。何故、この先は行ってはならないのですか?」
「皇帝が住んでいるからです。召し使いなど一部の者しか入ってはいけない事になってます」
老婆が皇帝と言う言葉に反射的に三人は、チラリと上の階へ目を向けたが、すぐに老婆へ目線を戻した。
「では、貴女は召し使いの一人という事ですか。ちょっと羨ましい気がしますけど、約束は守りますので安心してください。私たちは、そろそろ部屋に戻ります」
三人が、各々部屋に戻ろうとしたら今夜は特別だと言って三人を上の階へと案内してくれた。
「この廊下の突き当たりに、皇帝の部屋があります。ただし、我々以外の者は入ったことはありません。貴女たちからめでたく奥方に選ばれた時は、あの部屋に入れます。立ち話も何だから私の部屋に来て、あしたからの説明を受けてもらいましょう」
老婆の後について行き、たどり着いた先は一階の大広間とは反対側の部屋だ。
広くて迷う自信しかない柑奈は、一人では行動できないなと思った。
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