12-3.キミの大事なモノを守りたい

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***  結局実篤(さねあつ)は消防団には向かわず、団に電話もかけなかった。  そんなことをしなくても今、自分がいる麻里布町(このあたり)の状況を見れば、窪地(くぼち)になっている川西の辺りや、平田の辺りが水没するのは納得がいったから。  自分たちの家がある御庄(みしょう)は、周りを山々に囲まれた盆地だが、ハザードマップと照らし合わせてみるならば危険な地域であることは否めない。  実篤は一旦事務所に入ると、再度テレビをつけた。  地域密着型のケーブルテレビ『イワ・キャン』が提供する、市内各所に取り付けられた定点カメラの撮影した映像が二十四時間ずっと流れ続けているチャンネルに合わせると、各地のライブ映像が画面に四分割されて映し出される。  カメラは全部で十二地点分あるので、映し出す地域を三十秒ごとに切り替え、切り替えして……およそ一分半ほどで市内全部の地点を観ることが出来る仕様だ。  それに目を凝らすと、御庄にほど近い柱野や岩国インター付近が水没しているのが見てとれた。  カメラに向かって雨風が吹き付けているのだろう。  いつも以上に不鮮明な映像ではあったけれど、我が家の辺りが水害に遭っているであろうことは分かった。  実篤はテレビを消すと、倉庫の鍵を手に事務所裏へ行く。そうして事務所裏に設置した倉庫内からオレンジ色をした台形の大きな箱を取り出した。
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