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「もっ、もちろん、そのつもりじゃけど……もしもに備えて、ね?」
今すぐにでもすぐそばのくるみをギュッと抱きしめたくなって、「こんな外ではまずいじゃろ、俺!」と理性を働かせた結果、挙動不審に視線を泳がせてしまった実篤だ。
「分かりました」
言ってから、「あーん、それでもやっぱり!」とくるみがつぶやく。
「こっから実篤さんの家までって三十分以上も掛かるんですね。別々に行くん、何か寂しゅうなりました」
実篤の家は由宇町にある。
市町村合併で岩国市に組み込まれた町なので、結構距離があるのだ。
目的地に実篤の家を指定した瞬間、ナビが「目的地まではおよそ二十キロメートルで、四十分くらいかかります」と告げたことが不満らしい。
「ほいじゃあ車、そのままにして俺のに乗る?」
明日はどうせ『クリノ不動産』自体休みなのだ。
このままくるみの車が停めてあったからと言って支障はない。
ないのだけれど――。
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