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「実篤さぁ〜ん。用意はええですか〜?」
応接室の方からくるみの呼ぶ声がして、実篤はビクッと身体を跳ねさせる。
「ひゃいっ!」
はい!が思わず「ひゃい!」になってしまって、「俺のバカ!」と頭を抱えたら、その手がモフモフで泣きたくなった。
だけどくるみはそんな実篤を落ち込ませてくれる気なんてさらさらないみたいで。
「いきますよぉ〜? せぇーのっ!」
と、とってもとっても楽しそうだ。
(くるみちゃん、シラフよな?)
ビールを応接室に置いてきたけれど、まさか勝手に開けて、ひとりで飲んだりする子ではないと思う。
それなのに、だ。
やたらテンションが高いくるみに、実篤はずっと押され気味。
スパーン!と襖が勢いよく開いて……薄暗い廊下にいた実篤は、応接間の灯りに一瞬だけ目を眇めた。
と――。
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