5-1.オオカミとウサギさん*

11/29
前へ
/470ページ
次へ
 腕の中のくるみが実篤(さねあつ)の言葉に「ん?」と身動(みじろ)いで、二人の間にほんの少し隙間が出来る。 「どう脱がしたらええんか分からんのじゃけど……。情けのぉーてホンマごめん」  オオカミになる!と決めてもこれ。  自分のグダグダっぷりに思わず眉根を寄せた実篤(さねあつ)に、くるみが一瞬だけ瞳を大きく見開いてから、すぐさまクスッと笑った。 「うち、実篤(さねあつ)さんのそういうところが凄く(ぶち)好きです……」  つぶやくようにポツンと言って、くるみが実篤(さねあつ)の肩に額を載せる。  コツン、と軽くもたれかかってきたくるみの小さな頭の感触に、実篤(さねあつ)はドキドキを抑えられない。 「実篤(さねあつ)さん、うちより年上じゃけぇ、ホンマは沢山経験があるんかな?とか思うてちょっと悔しかったりしたんです。だから(ほいじゃけ)もし慣れた手つきで(これ)、脱がされてしもうたら、逆にモヤモヤしちょったかもしれんです」  顔を伏せたままくるみが言って。  実篤(さねあつ)は思わず「え……?」とこぼした。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

897人が本棚に入れています
本棚に追加