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「うちは初めてじゃけど……さすがに実篤さんもそうじゃとは思うちょりません。じゃけど……手慣れた風なんはあんまり感じさせられとうないなぁとも思うて。――ワガママ言うてごめんなさい」
滔々と吐き出されるくるみの本音に、実篤は心臓がキュッと締め付けられるほど彼女のことを愛しいと思った。
それと同時――。
「あ、あの……くるみちゃん。――キミ、初めて、なん?」
そこだけはどうしても聞き逃すことが出来なかった。
(あんなに積極的にお膳立てをしてくれたくるみちゃんが初めて? 嘘じゃろ?)
そう思ってくるみを見つめたら、途端彼女が真っ赤になってうつむいて。
(えっ、マジか)
実篤が口を開こうとしたら、くるみが慌てたようにそんな実篤の口に両手を当てて塞いできて、「それ以上言わんでっ?」と真剣な顔で見つめてくる。
口に添えられたくるみの小さな手が微かに震えているのを感じて、実篤は堪らずくるみをギュッと抱きしめた。
その瞬間、くるみの腕が緩んだのを合図に、実篤は彼女の耳元に優しく甘くささやく。
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