5-1.オオカミとウサギさん*

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「あ、あの、実篤(さねあつ)さん……?」  風呂場の磨りガラスに、くるみの黒服を纏ったシルエットがぼんやりと映って、実篤(さねあつ)は思わず肩をビクッと跳ねさせて「ひゃいっ!」とな声を上げてしまった。 「ごっ、ごめんなさい。びっくりさして」  風呂場の中、実篤(さねあつ)が跳ね上がったのが見えたのだろうか?  いや、そんなことはないと信じたい実篤(さねあつ)だったけれど、奇声を発してしまったことは確かなので、申し開きのしようがないと諦めた。  シャワーの水音が邪魔で、くるみの声が聞き取りづらかったから。  一旦コックを捻ってシャワーを止めると、実篤(さねあつ)は握ったままだった手を、慌てて愚息から離して「大丈夫よ。どうしたん?」と極力声を抑えめにして問いかけた。
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