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「あ、あの、実篤さん……?」
風呂場の磨りガラスに、くるみの黒服を纏ったシルエットがぼんやりと映って、実篤は思わず肩をビクッと跳ねさせて「ひゃいっ!」と変な声を上げてしまった。
「ごっ、ごめんなさい。びっくりさして」
風呂場の中、実篤が跳ね上がったのが見えたのだろうか?
いや、そんなことはないと信じたい実篤だったけれど、奇声を発してしまったことは確かなので、申し開きのしようがないと諦めた。
シャワーの水音が邪魔で、くるみの声が聞き取りづらかったから。
一旦コックを捻ってシャワーを止めると、実篤は握ったままだった手を、慌てて愚息から離して「大丈夫よ。どうしたん?」と極力声を抑えめにして問いかけた。
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