1.木の下の子リス

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生憎(あいにく)栗野(くりの)さん以外の人間は、みんな違う場所に出払っちょって、携帯で呼び戻しても駆けつけるのに時間が掛かりそうなんですよ。ホンマ戻って来たばかり(ばっかし)んトコ悪いんじゃけど」  と眉根を寄せられては、断れない。 「頼んじょいてあれじゃけど……怪我しない(せん)ように気ぃ付けて下さい(ちゃって)ね。それとっ。くれぐれも栗野(くりの)さんから手ェ出さんよぉーにせんとダメ(いけん)ですよ?」  本部長にそう言われて「ご武運を!」と至極真面目な顔をして送り出されたけれど、「絶対そんなこと思っちょらんじゃろ?」と思わず苦笑の実篤(さねあつ)だ。  実篤(さねあつ)は、自分でも自らの見た目が怖いのを自認している。  身長こそそんなに高い方ではないけれど、きっと顔つきが怖いのだ。  事務所の女性陣にも言われたけれど、身に(まと)うオーラがいけないらしい。  大抵の場合は実篤(さねあつ)が行って睨みをきかせれば相手が(ひる)んで逃げてしまう。  自分に急行を頼んだ本部長も、それが分かっていて指示を出したはずだ。
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