5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

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「えっと……くるみちゃん、ひょっとして……いや、ひょっとせんでも……酒飲んだん?」 (一人で二缶も!)  などと心の中で付け加えつつ。   スリスリと実篤(さねあつ)の胸元に額を擦り付けて甘えてくるくるみをそっと抱きしめながら問いかけたら、 「()って実篤(しゃねあちゅ)しゃ、お風呂から全然(いっしょも)上がって来んのんじゃもん。一人で待っちょったら緊張(きんちょぉ)しれきらんじゃけ、仕方(しから)ないじゃろ?」  呂律(ろれつ)の回らない口調でぷぅっと唇を突き出すくるみをあやすように、実篤(さねあつ)は「うん、うん」と相槌(あいづち)を打った。  くるみはそんな実篤(さねあつ)を、酔いで潤んだ大きな目で見上げながら思いの丈をぶつけてくる。 「喉も乾いちょっらし丁度(ちょうろ)ええかなぁって一缶目(ひとちゅめ)開けたらわけわからんなったんよ。(ぬる)ぅ〜てあんまし美味しゅうなかったぁ〜」 (いや、温くて美味しゅーないって感じた時点で二缶目にいくのやめませんかね、くるみちゃん!)  などと思った実篤(さねあつ)だったけれど、何せ腕の中のくるみがして可愛くてそれどころではない。
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