5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

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「一人で歩けれる?」  恐る恐る聞けば、くるみはと楽しげに笑いながら「無理れしゅね」と実篤(さねあつ)に身体を預けてくる。 「じゃけ、お願い。連れてって?」  挙げ句上目遣いでそんな風におねだりをしてくるとか、この子はどれだけ小悪魔なんだろうか?  くるみがキュゥッとしがみついてくるたび、薄い布地越しにふわふわの胸が否応なく押し当てられてくる。  そのせいで、下の方では息子さんが「お父さん、まだですか?」と騒ぎまくりなのだ。  そろそろなだめるのも限界だし、マジで勘弁してくれと思ってしまう。  はぁ~っと大きくため息をつくと、実篤は観念したように 「ちょっとごめんね」  そう声を掛けてくるみの膝裏(ひざうら)に腕を差し込んで、横抱きに抱え上げた。 (う〜。生足っ)  途端、手のひらにくるみの温かな地肌の感触が伝わってきて、正直「かーなーり! 限界だ!」と感じてしまう。 「あれれ? 実篤(しゃねあちゅ)しゃ、お手手三本(しゃんぼん)……?」  キョトンとした様子でくるみが言ってくるから、心の中で(んなわけなかろうよ!)と突っ込みを入れつつ、(それ、手じゃなくて(のぉて)アレじゃけぇね⁉︎ くるみちゃん、絶対分かっちょるじゃろ?)と言い訳をしてみたり。 「くるみちゃん、お願いじゃけ、あまり(えっと)動かんちょいて?」  そう声を掛けながら、実篤は先刻からずっと、一人で(もだ)えまくりだ。
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