5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

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「らって、芳香剤(ほぉこぉじゃい)もちゃんとお花の香りのするんが置いてあっらし、トイレも凄く(ぶぅ〜ち)綺麗れした。ちゅいでに! 便座(べんじゃ)カバーが肉球(パウ)柄で可愛らしかったれす!」  全部、妹・鏡花(きょうか)が一緒に住んでいた頃の名残(なごり)なのだが、まぁそれを維持し続けている時点で確かに自分はマメなんだろう、と気付かされた実篤(さねあつ)だ。 「トイレだけはいつ誰に貸すことになるか分からんけんね。だから(ほいじゃけ)常に綺麗にしちょけって……。まぁおふくろの受け売りなんじゃけど」  来訪者がそんなにしょっちゅうあるわけではないけれど、一応この家は栗野家(くりのけ)の皆にとっては実家に当たる。  親戚連中が集まってくることもないわけではないし、不測の事態に備えてトイレはいつも清潔に、は常に心掛けている実篤だ。  それは不動産屋の事務所にしても同じで。  従業員らにはトイレの掃除は特に念入りにするように言いつけてあるし、実篤自身も使った後は不備がないかチェックするようにしている。
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