5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

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「そんな照れんでも()かろ? ね、くるみちゃん、こっち見て?」  わざと余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)なふりをして問い掛ければ、くるみがソワソワと身体を震わせて。 「らって……うち、お父しゃ以外の……見らころない、んじゃも……」  目を覆った手指にほんの少し隙間を開けると、そう言って実篤(さねあつ)をちらちらと見上げてくる。  その父親の裸にしたって、くるみが最後に見たのは彼女が中学生になるかならないかの辺りなのだが、そんなこと実篤は知るよしもない。  くるみの両親は、可愛い一人娘のために結構気を遣ってくれていたのだ。  栗野家(くりのけ)の、鏡花(きょうか)への男三人衆――父親含む――の無体なあれこれとはえらい違いだったわけで。 「(なん)それ。逆に凄い(ぶち)光栄なんじゃけど! ねぇ、くるみちゃん。それなら(ほいじゃったら)尚のこと俺のほう、見て? 俺、くるみちゃんの目に映る、お父さん以外の最初の男になりたい」  言いながらくるみの上に両腕をつくようにして覆いかぶさると、実篤はニヤリと笑ってみせた。  ヘタレわんこの実篤でも、こんな風にくるみが恥じらってくれると、ついつい雄の本能で追い詰めたくなるらしい。
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