5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

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 そんなことにはしないと誓いたいところだが、情けないことにくるみの小悪魔ぶりを思うと、実篤(さねあつ)は若干自分のことが信用出来なかったりするのだ。 「ひゃいっ! 分かりましらっ! うち、ちゃんとお勉強(べんきょぉ)しますっ」  言って、くるみが実篤の一挙手一投足を食い入るようにじっと見つめてくるから。 (わー、俺、馬鹿なんっ⁉︎ くるみちゃんの視線が物凄い(ぶちくそ)気になってうまく封が切れんのじゃけどっ!)  緊張の余り、手がフルフルと震えて、パッケージが上手に破けないではないか。  そもそも、利き手がくるみの中に入っていて不在中。  開けようと思ったら元々不器用な左手と、口を使うしかないわけで。  中身を傷つけたらダメだ(いけん)と思ったら、グダグダぶりに拍車がかかる。 「あ、あにょ……実篤(さねあちゅ)しゃ。――うち、やってみたい……」  モタモタしていたからだろうか。  くるみが不意にゴムを持った実篤の手をギュッと掴んできて、そんなことを言い出した。
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