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「んだよ! 用心棒付きじゃとか聞いてねぇぞ!」
男が負け惜しみのようにそう喚いたところでようやく警官が到着した。
俺はまだ何もしちょらん!だの何だの言い訳をするのを「まぁまぁ」と宥められながら連れていかれる男を追って人だかりも野次馬たちの視線も、その男と共にそちらに流れていく。
それを見届けて周りが静かになった頃、実篤は背後に立ち尽くしたままの女の子に向き直った。
「……大丈夫?」
なるべく優しく声をかけたつもりだけど、その子はビクッと肩を震わせて実篤を涙目で見上げてくる。
「災難じゃったね。怖かったじゃろ。駆けつけるのが遅ぉなって悪かったね」
何とかその緊迫した空気を和らげてあげたくて、実篤は努めて静かな声音で語りかけた。
内心、怯えた目をした女の子の可愛さに相当やられつつ。
そうして同時に思っていた。
――この子、何か既視感あるんじゃけど、と。
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