5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

40/46
前へ
/470ページ
次へ
「これ、裏と表があったりしゅるん?」  どっちも一緒に見えてしまったくるみだったけれど。  何の気なしにつぶやいたら、実篤(さねあつ)が「もちろん」と答えてくるみの方へ手を伸ばしてきて。 「やんっ。取らんで?」  思わずピッと手を引っ込めたら「えっ?」と驚かれてしまう。 「うちにやらしてくれりゅって約束(やくしょく)らったじゃないれすか」  ムムーンと口をとんがらせて言ったら、実篤が瞳を見開いた。 「えっ、いや、あれは……開封までの話じゃったんじゃないん?」  とか。 「まさか(ましゃか)っ」  くるみはフルフルと首を横に振る。 「うちが、実篤(しゃねあちゅ)しゃに付けてあげりゅんれす」  言ったら「嘘じゃろ」とつぶやかれて。 「(うしょ)じゃないけん」  くるみはゴムを持った手を実篤に見せつけながらにっこり笑う。 「実篤(しゃねあつ)しゃんは……うちに(ちゅ)け方のをして下しゃい。うち、その通りにやりましゅ」 「ほいじゃけどくるみちゃん……」 「男の(ひろ)(まか)しぇにしたらダメな(いけんの)んじゃろ?」  ウルルンとした目で見上げたら、実篤に盛大な溜め息を落とされてしまった。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

899人が本棚に入れています
本棚に追加