5-2. 桃色狼とほろ酔い兎*

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 ただ、〝痛い〟と聞いていた初めての行為が拍子抜けするほど痛くないことにただただ驚いて。 「くるみちゃ、んっ、……平、気っ?」  実篤(さねあつ)が吐息を落としながら自分を(いたわ)ってくれるのが物凄く嬉しかった。 「実篤(しゃねあつ)しゃ、苦しい?」  そんなに動いているわけではないのに、実篤の額に薄ら汗が滲んでいて……しかも呼吸が切ないくらいに乱れているから、くるみは心配になってしまう。  自分がうまく出来ていないせいで、実篤が痛かったり辛かったりするのは嫌だと思って。  そっと実篤の頬へ手を伸ばしたらその手をギュッと包み込まれた。 「苦しい、わけないっ。……くるみちゃんのなか、熱くて狭くて……にすげぇ絡みついてくるん、よ。()すぎて、ヤバイけん、グッと(こら)えちょる、トコ」 「堪えりゅって……(なん)を?」  くるみには実篤の言っている意味がさっぱり分からない。  この()に及んで、まだ自分は彼に何か我慢させちょるんじゃろうか?と不安になって眉根を寄せたら、 「そんな、顔、せんで? 俺、すぐ(イキ)そう……なんっ、セーブしちょるだけ、じゃけっ」と実篤が包んだままのくるみの手を愛しそうに頬へすり寄せてくる。
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