6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

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 瞬間、腕の中のくるみがピクッと身じろいで実篤(さねあつ)を見上げたのだけれど、頭に血が昇った実篤はそれには気付かないまま。 「くる……木下(きのした)が具合悪そうじゃったんで僕が取っちょった部屋で休ませてあげようと思うただけです。――今日は僕、一応幹事の一人なんで」  そこで、男がニコッと人畜無害そうな笑顔を向けてきたけれど、腕の中のくるみが明らかに震えているのが分かる実篤は、男を見つめる目から敵意を外さない。 (たまたまとか絶対嘘じゃろ)  男が胸に付けたままのネームプレートに『鬼塚(おにづか)純平(じゅんぺい)』と書かれているのも見逃さなかった実篤だ。 (こいつ、くるみちゃんが会いとぉないって言いよった奴じゃし……) 「でしたらもう俺が交代しますんで大丈夫です。お手間を取らせましたね。ああ、あと、申し訳ないんですけどうちの妹――栗野(くりの)鏡花(きょうか)に、長兄に連絡する様伝えて頂けますか?」 (あの鏡花が、こんな状態のくるみちゃんから離れちょること自体おかしいし、くるみちゃんのこの怯え様からしたら、鏡花も安全じゃないんかも知れん)  何となく直感的にそう思った実篤だ。
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