6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

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 鏡花(きょうか)に自分から電話をかけて呼び出すことも可能なのに、わざわざ鬼塚にそう頼んだのは、彼を牽制(けんせい)する意味もあった。 「ええ……分かりました。ただ、会場も広いですし何しろ参加人数も多い。すぐには見つけられんかも知れんのんですけど……」  ここへきてわざとらしく渋る鬼塚に、実篤(さねあつ)はチラリと冷たい視線を向けると、「先程も申し上げた通り至急の用件なんですよ、。失礼ですが、幹事さんならその辺何とでもなりますいね?」と穏やかな――でも聞く者が皆ゾクリと背中を震わせるような低音で畳み掛ける。  わざと〝名前も覚えたぞ〟という意思表示を込めて、「鬼塚さん」を織り交ぜたのもあるだろう。 「ああ、それもそうですね。緊急事態っちゅうことで鋭意努力します」  すぐに鬼塚がそう答えて。  だがこの鬼塚という男もなかなか肝が据わっているらしい。  実篤のその声音に、笑顔の仮面を崩さないままにそう返せたのだから。 (こいつ、相当腹黒いな)  実篤は今までの経験から、そう判断した。
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