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「ちょっとだけ待ってくれんかな? 俺が妹のこともちゃんと連れ戻すけん。それまでの間、くるみちゃんは心配せんでここに居て?」
実篤の言葉に、くるみが涙をいっぱいに溜めたうるうるの目で見上げてきて。
「実篤さ……ン」
震える声で自分の名前を呼んで更に一層瞳を潤ませるから。
実篤は(可愛過ぎじゃろ!)と思いながらも、この涙の元凶が自分ではなく別の男の愚行だと気が付いて心底腹立たしくなる。
「お願いじゃけ、俺以外の男がしたことで泣かんちょいて?」
実篤は、この先もくるみを泣かせるつもりなんて微塵もない。
だけど、彼女を笑わせるのも怒らせるのも……それこそ今みたいに泣かせるのでさえも……全部全部自分でありたいと思ってしまった。
実篤の言葉に、くるみが「ごめ、なさ……」と再度しがみついてくるから。
実篤は今すぐにでも可愛い恋人をどうこうしたい!という衝動を抑えるのに理性を総動員する羽目になる。
そこでタイミング良くズボンの尻ポケットに突っ込んでいたスマートフォンがブーッ、ブーッ……と振動を伝えてきて、実篤のなけなしの理性に加勢してくれて。
どうにかこうにか理性に軍配が上がった実篤だ。
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