6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

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(会場出入り口の辺とか全然見えんじゃん!)  実際、それも目的のひとつなのではないかと勘繰りたくなるぐらいに、ひょこひょこと鏡花(きょうか)が会場を気にして身体を動かすたび、男たちが視界を遮るように前に立ちはだかるのだ。  都会の大手銀行窓口で(つちか)った、〝お客様が第一です♥な営業スマイルスキル〟がなかったら、きっと心の中でつきまくりの舌打ちが、表情に出てしまっていただろう。 (ぶっちゃけ凄く(ぶち)面倒くさいけど、何とか穏便に現状を打開せんと)  そんなことを思いながらも、眼前の男達が問い掛けてくる「栗野(くりの)さん、今どこに住んじょるん?」だの「高校ん時の部活は何じゃったん?」だの言うどうでもいい質問に、可愛らしい笑顔を振り撒きながら「え〜。今は東京に住んじょりますぅ〜」とか「高校生の頃は簿記部でしたぁ〜。地味で恥ずかしいけん、ここだけの話ですよぉ〜?」とか当たり障りのないレシーブを打ち返している鏡花だ。 (我ながらグッジョブ!)  心の中で、出来る自分にサムズアップを送りつつ、いい加減笑顔が引きつって本性が出そうなので何とかせんとなぁと思う。 * 「今井、中野、田村、盛り上がっちょるトコちょい悪いけど借りるぞ」  と、いきなり男たちに割り込むようにして、顔立ちの抜群に整った美形男が入ってきて、鏡花の手を掴んだ。
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