6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

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「さっき、たまたまキミのお兄さんに()うたんじゃけどね、そん時に伝言を言付かったんよ」  もったいつけた口振りで話しながら、自分を廊下の隅っこ――会場の方から思いっきり遠ざけるように誘導してきたのが本当にいけ好かないな、と思った鏡花(きょうか)だ。 「あらっ。そうなんですねっ♪ 実はうちの兄、今日は私と友人のアッシー君してくれちょるんですよ」  ここで鬼塚の言う〝兄〟が、次兄の八雲(やくも)と言うことはないだろう。 「そっか。それじゃあ(ほいじゃあ)その絡みかなぁ? 何か至急で連絡欲しいっておっしゃっていらしたよ(言いよっちゃったよ)?」  再度人畜無害そうな笑顔を向けられて、何故かゾクリと寒気を覚えた鏡花だ。 (何なん、この男。笑顔が物凄い(ぶちくそ)嘘くさいんじゃけど!)  お愛想笑いをしている時点で自分も同類なのだけれど、話したくもないのに無理矢理鬼塚と会話せざるを得ない状況にされている自分と、自らこちらに近付いてきた男の営業スマイルを同列に捉えてもらっては困る。 (くるみちゃぁ〜ん! この男とは別れて正解よ? うちのお兄ちゃんの気持ち悪い笑顔の方が感情が込もっちょる分、よっぽど気持ち(わる)ぅないわ)  等とどこか矛盾したことを思いつつ。だけど、今鬼塚が告げてきた言葉はある意味チャンスだな?とも思って。
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