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「わ〜。そうなんですね。じゃあ、早速電話してみまぁ〜す」
言って、バッグからスマートフォンを取り出した鏡花だったけれど――。
(何でコイツ、私のそばを離れんのん?)
普通電話をする相手からは距離を空けるものなんじゃないん?と思ってしまった鏡花だ。
「あの……」
さすがに距離が近過ぎやしませんか?という思いを込めて非難がましい目で見上げたら、
「ごめんね。今、鏡花ちゃんのそばを離れたらさっきの奴らにまたキミを攫われかねんじゃん? 僕、もう少し鏡花ちゃんと話したい思うちょるけん、悪いけどそばにおらして?」
言われて、内心「ひーっ!」と悲鳴を上げた鏡花だ。
ノーサンキューです!と言いたいところだけど、くるみのことが心配でそれも出来なくて。
「またまたぁ〜。女の子を喜ばせるのがお上手ですねっ」
仕方なく自分でも虫唾の走る言葉を口にしつつ、とりあえず兄に電話!と気持ちを切り替えることにした。
確信はないけれど、兄と繋がれたら現状を打開できる気がした鏡花だ。
(何はともあれくるみちゃんの安否確認と、私自身の安全確保優先で)
鬼塚監視のもと、兄に繋がる呼び出し音を聴きながら、鏡花はそんなことを考えていた。
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