6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

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「うん、私は大丈夫。こう見えて割と百戦錬磨じゃけ、何とかなったよ」  都会での一人暮らし歴も数年ともなると、変な男に絡まれたことだって一度や二度ではない。  そのたびに何とか一人で切り抜けてきた鏡花(きょうか)だ。  今回は逆に長兄が近くにいてくれただけ心強かった。  などということは当然おくびにも出さず、くるみと二人、お互い無事でよかったね、と確認し合ってやっと。 「お兄ちゃん、たまには役に立つじゃん」  鏡花はツンとした態度で実篤(さねあつ)(ねぎら)った。 「お(まっ)、もっと他に言いよう……っ!」  当然というべきか。  鏡花の塩対応に実篤が不満たらたらでブーブー言っているけれど、だからと言って本気で怒っているわけではないのは、雰囲気からしっかり伝わってくる。 (ホンマうちのお兄ちゃんは人が()えんじゃけ)  さっきまで、貼り付けたようなニコニコ笑顔のくせに、隠し切れない底意地の悪さを感じさせられる鬼塚(あいて)と一緒にいたから余計。  実篤の裏表のない温かさにホッとした鏡花だ。 (ま、図にのるけん、絶対面と向かっては言うちゃらんけどね)
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