6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

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*** 「何にしても、よ!」  自分とくるみを横目に見つつ。 「アイツ、自信満々にいい男ぶりをアピールしてきちょったけどさぁ。言うちゃあ何じゃけど八雲(やくも)(にい)の方が数倍良い(ええ)男じゃん? そんじょそこらの男じゃみんな芋に見えるっちゅーの! 八雲(にい)で肥えた私の審美眼を舐めるなってね♪」  荒々しい吐息で言葉を続ける鏡花(きょうか)に、 (いや、待て鏡花! 何でそこで八雲なんよ! お前を助けたんは俺なん、忘れちょらんか⁉︎)  と思った実篤(さねあつ)だったけれど、その言葉はグッと喉の奥に飲み込んだ。  それよりも伝えなくてはいけないことがある。 「なぁ鏡花。悪いんじゃけど今日はタクシーで帰ってくれん?」  財布から万札を取り出しながら何気ない風を装って言ったら、「まぁっ。この男は可愛い妹を放っぽって恋人と何する気かしらね? いやらしいっ!」とわざとらしく言われてしまった。 「きょ、鏡花ちゃんっ」  その言葉にくるみが真っ赤になるのを見て、「くるみちゃん。嫌じゃったら蹴っ飛ばしてもぶん殴ってもええんじゃけぇね? うちのお兄ちゃん、打たれ強いけん少々大丈夫よ」と鏡花がクスクス笑う。
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