6-5.小悪魔の不安と、ワンコ狼の本音*

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 鏡花(きょうか)をタクシーで送り出してホッと一息ついて。  そのまま部屋に戻るのが何となく照れ臭かった実篤(さねあつ)は、当初一人で行こうと思っていた最上階のバーにくるみを連れて来た。  左隣のくるみがあんまりにも綺麗で直視出来なくて。  街並みを見下ろせる、窓際にずらりと並んだスツールに腰掛けて、見るとはなしに窓外の夜景に目を向ける。  二人して部屋が取ってあるのをいいことに、しっかりアルコールを(たしな)んでいた。 (ここ、ノンアル……じゃのぉーて、えっと何ちゅうんじゃったっけ。まあも結構充実しちょったんじゃな)  このホテルに入ってすぐに調べた〝モクテル〟という言葉は、既にすっかり頭の外に追い出されている実篤(さねあつ)だ。  メニュー表の中、写真付きで色鮮やかなカクテルがズラリと並んだ中、全体の約五分の一くらいのスペースを割いて〝ノンアルコール〟と表記された一群が目についた。  オシャレに〝モクテル〟と記されていなかったから、結局覚えたて(?)の言葉を思い出せなかった実篤だったけれど、それよりもメニュー表にカクテルの説明とともに「カクテル言葉」が書かれているのが面白いなと思って。
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