6-5.小悪魔の不安と、ワンコ狼の本音*

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「やんっ、そんなん、わざわざ言うてくるとか……。実篤(さねあつ)さんの意地悪ぅっ!」  頬を赤らめて恥ずかしがっている素振りを見せるので、てっきり顔を背けているのかと思いきや、予想外れ。  キッと睨み付けるみたいに大きな目で自分を見上げたままなのが、小悪魔なくるみらしくて滅茶苦茶(ぶちくそ)可愛いと思ってしまった実篤だ。 「ねぇ。――キミの胸、直に触らして貰って(もろうて)もええ?」  言いながら、実際には既にくるみの背中のファスナーの引き手に手を掛けていたりする。 「ダメって()うても触るくせに」  くるみにも実篤の思惑が分かっているんだろう。  恋人が服を脱がせやすいよう身体をほんの少し浮かせるようにしながらぷぅっと頬を膨らませて見せた。 「くるみちゃんは俺のこと、何でもお見通しじゃね」  言いながら、(全部俺のせいにするみたいな口ぶりじゃけど……協力的なんバレバレよ?)と思わずにはいられない。  きっとくるみだってそうして欲しいくせに、恥ずかしさで素直になり切れないんだろう。  そんなブレブレな所も含めて、くるみのことが愛しくて堪らない実篤だ。 「ごめんね、くるみちゃん。俺、くるみちゃんのこと、好きで好きで堪らんけん、全部ぜーんぶ奪いたいんよ。――お願い、許して?」  ならば自分もそんなくるみの小芝居に乗ろうと思った。
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