7-1.過日吐露した必要不可欠なアレ

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初詣(はつもうで)、皆さんと一緒に行けて、うち、凄く(ぶち)嬉しかったです」  ニコッとくるみに微笑み掛けられて、実篤(さねあつ)は「ああ、そう思うてもらえたんなら()かった」と応えながらも、複雑な気持ちに包まれる。  両親はおろか兄弟姉妹も、果ては四人いるはずの祖父母でさえも一人もこの世に残っていない天涯(てんがい)孤独なくるみは、正月間(しょうがつあいだ)もこれと言って親戚付き合いの予定はなくて。  それを知っていた実篤が、家族から離れてくるみの家へ泊まりに行こうと、それとなくくるみが一人で過ごしていることを話したら、「それだったら(ほいじゃったら)うちに来りゃーええじゃ?」と、母・鈴子(すずこ)が、鏡花(きょうか)経由。くるみに「どう?」としてしまった。  常日頃から家族愛に飢えているくるみが、その誘いを無下にするはずもなく――。 「大晦日(おおみそか)に家族団欒(だんらん)の場に誘うてもらえるとか……ぶち幸せです! それで(ほいで)うち、その日は何時くらいに伺ったらええでしょう?」  気が付いたら、くるみからルンルンな様子で年末年始のお誘いについて〝事後報告〟を受ける羽目になってしまった実篤だ。
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