897人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ
「うちも皆さんとご一緒出来てホンマ嬉しいです」
すっかり栗野の面々に打ち解けたくるみが、〝私〟という余所行きの仮面を外して〝うち〟と自称して嬉しそうに頬をバラ色に染めた。
そんなくるみの顔を遠巻きに見て、実篤はちょっぴりモヤモヤしてしまう。
(うち、って言うん、俺の前だけにしてぇーや、くるみちゃん……)
そんな了見の狭いことを思ってしまう自分がとっても嫌だと思うのだけれど、くすぶる嫉妬心が抑えられないのだから仕方がないではないか――。
それに。
(八雲! お前、毎年俺達とは行かんと地元の女の子達と行きよーるじゃろーが! 何で今年に限ってそっち行かんのんよ!)
くるみを取り囲む妹と弟をちょっぴり離れた所でムスッとした顔で見遣りながら、実篤は我知らず小さく吐息を漏らした。
「何、実篤。溜め息なんかついてから。――悩み事?」
途端、それを耳ざとく聞きつけた母・鈴子に、心配そうに顔を覗き込まれてしまう。
「いや、そういうわけじゃ――」
最初のコメントを投稿しよう!