7-1.過日吐露した必要不可欠なアレ

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***  正月休み最終日の一月四日。  くるみは実篤(さねあつ)と一緒に広島市内へショッピングに来ていた。 「よぉ考えてみたら実篤さんと広島来るん、初めてですね」  思えば九月から付き合い始めて四か月ちょっと。  デートと言えばお互いの家を行き来することが中心で、こんな風に高速を飛ばして出かけたこと自体なかった。  今日はぶらぶらと目的を定めず本通(ほんどおり)商店街をウィンドウショッピングしようと言う話になって。  ゲームセンターでクレーンゲームを楽しんだり、買うあてもないくせに服屋や靴屋に立ち寄ったりした二人は、歩き疲れた足を癒すため、たまたま目についた紅茶専門店『愛しい香り(モナローム・シェリ)』で一休みすることにした。 「紅茶のお店でランチが食べられるじゃなんて……思うちょりませんでした」  くるみが席に着くなり、実篤がさっきゲームで取ったカワウソのぬいぐるみを抱いたままキラキラと瞳を輝かせる。 「俺も」  コーヒーより紅茶の方が好きなくるみに、お茶をするついで。販売コーナーで美味しそうな茶葉――ティーバッグなど――を買えたらええな……と軽い気持ちで入った店だったのだが。
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