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「興味はあるんですけどいざ穴をあけるゾ!ってなったら怖ーて。結局あけず終いになっちょります」
この逡巡は、くるみが高校を卒業してすぐに始まったらしいので、結構長いこと現状維持できているらしい。
鏡花曰く、「最近はイヤリングも可愛いデザインが豊富なんよ。わざわざあけんでもえかったわぁーって、ピアスホールが不調になるたんび思うんじゃけど!」らしいので、怖いのを我慢してわざわざ穴なんてあけんでもええんじゃなかろうか?と思った実篤だ。
何より――。
期せずしてくるみの小さな耳を見てしまった実篤は、ドキッとして。
(あんな可愛い耳に傷とかつけたら罰が当たりそうじゃわ!)
そんなことを思ったのだ。
それと同時、(夏じゃのぉてホンマ良かった!)と思わず吐息を落としたのは、不意打ちの様に髪をかき上げられても厚着のお陰で首筋やデコルテのラインが隠されていることにホッとしたからに他ならない。
もしその辺りがむき出しになっていたら、無意識に口付けてしまっていたかも知れないではないか。
「実篤さん?」
そんなこんなで不自然に言葉に詰まったからだろう。
くるみがキョトンとして滅茶苦茶可愛い顔で実篤を見上げてきた。
(ひぃー。小悪魔きたっ!)
などと実篤が心の中、焦りまくっているのなんてどこ吹く風。
くるみがダメ押しみたいに実篤の袖口をチョン、と引っ張るから。
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