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「くるみちゃん、パンを作る時って手袋とかするん?」
何気ない風を装って聞いたら、「もちろんです。衛生面にはかなり気ぃ遣うちょります」という答えが返って来て。
実篤は心の中で「よっしゃー!」とガッツポーズをした。
「ほいじゃあ指輪とかどうじゃろ? 手袋するんなら付けとっても問題ないじゃん? その上イヤリングとかみたいに外れたりしにくいけぇ、一石二鳥じゃ思うんじゃけど」
外れにくく邪魔になりにくいと言う観点で見るならばネックレスでも可なのだが、そこはあえてスルーした実篤だ。
まずはとにかくくるみの左手薬指のサイズをゲットせねばならない。
「指輪……?」
「うん」
くるみの反応を見て(指輪は重かったか⁉︎)と不安になった実篤だったけれど、そんな間を与えないみたいに店員がパッと瞳を輝かせて、「指輪はこちらです」と踵を返して。
その行動力に、実篤は密かに(店員さんグッジョブ!)と思わずにはいられない。
それについて行きながら、見るとはなしにショーケースに視線を落としたら、イヤリングとネックレスのセット品がいくつか目についた。
(指輪、くるみちゃんが凄い気に入るのがあれば別じゃけど)
指輪を推しておいて矛盾しているが、そうでないならば、今日はそちらをプレゼントしたいなと思ってしまった実篤だ。
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