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もじもじと顔を赤くして俯くくるみに、実篤がキョトンとしたらちょいちょいっと可愛いらしく手を引かれて。
実篤が少しかがんでくるみの方へ顔を近づけたら「実篤さんが足りんでソワソワしちょるんはうちだけですか? 付けたままじゃったら失くしそうで怖ーて」と小さな声で耳打ちされた。
どうやらそういうことをしたくて、アクセサリーを付けることを躊躇ってしまったらしい。
「――っ!」
その言葉に驚いたのは実篤だ。
さっきジュエリーショップで、くるみ不足でどうにかなりそうだったのを思い出して、危うく愚息が『僕はいつでもスタンバイOKです、お父さんっ!』とフルスロットルになりそうになる。
(いや待て、街中でそれはまずい!)
寸でのところで何とか下腹部に集中しそうになった血液を他所事を考えて蹴散らした実篤だったけれど。
くるみの手を恋人つなぎの要領でギュッと握ると、「そんなわけなかろ。俺だって……」とボソッとつぶやいた。
息子に集まらないよう散らした血が、どうやら耳と顔に集中してしまったらしい。絶対今の自分は誰が見てもゆでだこ張りに真っ赤に違いないわぁー、とくるみから視線を逸らしながら思った実篤だ。
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