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「あんね、俺、ここら辺の土地勘があんまりなくて」
ゴニョゴニョと言い訳をして。
赤い顔を見られないよう、スマートフォンの検索結果『近隣のラブホテル一覧』の表示画面を吟味するふりをしながら目線をうつむけたまま言ったら、「うちもです」とくるみが実篤にギュッと身体を寄せてくる。
「――っ!」
(くっ、くるみちゃん! 頼むけぇこれ以上俺(の息子)を刺激せんでーっ)
変なものを検索している画面を見られるのも恥ずかしいし、それに何より――。
お互いのコート越しと言う厚みをもってしても、ふんわり柔らかなくるみの極上ふわふわおっぱいの感触が腕にじんわりと伝わってきて、実篤は心の中で声にならない喜びの悲鳴を上げた。
「……実篤さん?」
そんな実篤の気苦労なんて知らぬ気にくるみがきょとんとした顔で見上げてくるから、実篤の顔はますます赤らんでしまう。
「えっ。実篤さん。もしかしてお熱出たりしちょらんですか? お顔、真っ赤じゃないですか!」
それを、くるみが心配そうに眉根を寄せて気遣ってくれるから、実篤は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「だっ、大丈夫っ。大、丈夫なん、じゃ、けど……その、今ちょっとくるみちゃんに触れられると色々と障りが出そうじゃけ、その……ちょっとだけ離れてもらえると助かります」
こういう時、どうしてもしどろもどろ。敬語になってしまう実篤だ。
そもそも厚手のコートで気の早い〝息子〟の自己(事故?)主張を隠せるのにも限界がある。
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