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最近仲間と共闘してモンスターを狩るオンラインゲームにはまっているらしい宇佐川は、ギルドマスターの女性にご執心で夜更かし気味だと話していた。
恋人はいないのかもしれないけれど、気になる女性がオンライン上にいると言うならば、早く帰ってその趣味に時間を費やせばいい。
そう思った実篤だったけれど、ここ数日あくびが目立つ宇佐川を思い出して、ちょっとだけ軌道修正。
(まぁたまにゃー自制して、日付が変わる前に寝れよ?)
そんなことを思って。
それでも尚も「でも」と言い募る宇佐川に、「ゲームん中。バレンタインイベントとかないんか?」と聞いたらハッとしたように瞳を揺らせた。
どうやらビンゴだったらしい。
「ほら、あるんじゃろうが。だったら遠慮せんと帰れ」
ニヤリと笑いながら言ったら、宇佐川は「ひっ」と声を漏らしてから、何度も何度も頭を下げて申し訳なさそうに帰って行った。
そんなこんなで一人残って残務処理をこなした実篤だ。
今日は契約件数もいつもより多めだったので、書類も常より多かった。
くるみが、そんな自分をヤキモキしながら待ってくれているのは分かっていたけれど、それと同時。実篤はここの最高責任者として、くるみに会うことを理由に仕事の面で手を抜きたくないと思ってしまった。
きっと自分のために実篤がそんなことをしたと知ったら、くるみだって怒るだろう。
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