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「それで……、さっきは何言うたん?」
実篤、男としてはそれほど大柄な方じゃない。
身長は一八〇センチない(一七六センチ)のが自分としては結構不満なところなのだけれど、それでも幸いと言うべきか。
愛しいくるみが一五二センチと、女性としても小柄な方なので、身長差的には申し分ない体裁を保てている。
今まで付き合ってきた年上女性たちは、皆こぞって一六五センチを超えた人達ばかりだったので、ヒールのある靴を履かれたりすると、もう少し自分に身長があればと思わされることが多かった。
だが、くるみに関してはそういう負い目を感じさせられること自体皆無で。
くるみが前髪をふんわりと立てたポンパドールを好むのは、自分の小ささを意識してのことらしいと知った時、そういう背伸びですら実篤には愛しくてたまらなかった。
その身長差のお陰でくるみをギュッと抱きしめた時、彼女の頭頂部にあごが載せられてしまうくらいの位置関係になるのが、実篤は嬉しくて仕方がない。
そんなわけで、くるみを腕の中に抱きしめてからずっと。
彼女のふわふわの髪の毛から女性らしい甘やかな香りが立ちのぼってくるのを胸一杯に吸い込みながら、(女の子っちゅーんは何でこんなに良い匂いがするんじゃろう)とうっとりさせられている実篤だ。
「……えっと、さっきはうち、『デートするん、久しぶりで楽しいですね』って言いました」
そんな小さくて愛くるしいくるみが、恥ずかしそうに耳まで赤く染めてはにかむから、実篤は彼女を抱きしめる腕に力を入れ過ぎないようセーブするのに非常に苦労している真っ最中。
「何か改めて言うたら凄い照れ臭いんですけどっ。実篤さんがちゃんと聞いてくれちょらんけぇ」
照れ隠しだろうか。
ぷぅっと頬を膨らませて実篤を下から睨み上げるくるみが凶悪に小悪魔で。
結果、「あー、もうっ。何でくるみちゃん、そんなに可愛いんよ! 反則じゃろ」と、くるみにとっては『何でですか⁉︎』という不満を漏らして、ひとりフルフルと身体を震わせる羽目になった。
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