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思わず勢い余ってそんな風に一気にまくし立てて……。
目の前のくるみが大きく瞳を見開いた後、「実篤さん……」と小さくつぶやくなりうるりと目元を潤ませるのを見てやっとハッとした実篤だ。
(え、あ……。ちょっと待って。俺、今……)
深く考えなくても分かる。
たったいま感情のままに吐露してしまったあれこれは、完全にプロポーズの言葉じゃないか。
(マジか……)
テンパり過ぎにも程があるじゃろ!と自分にセルフつっこっみを入れてから、実篤は腹をくくった。
(えーい、もうこうなったらこのままっ!)
思いながらグッと拳を握りしめると、潤み目のくるみに視線を合わせた。
「――木下くるみさん。俺と……結婚してください」
そこでゴソゴソとポケットに手を入れて。
「あ……」
思わず間の抜けた声を上げてしまった。
***
ここ!というところで急にくるみの顔を見詰めたまま実篤が眉尻を下げるから。
「……実篤、さん?」
くるみは「はい」とも「いいえ」とも言えないままに実篤を見遣った。
「あ、あのっ、ごめん! 俺……! ちょ、ちょっと待っちょってくれる? すぐ戻るけん!」
そうして、あろうことかそんなくるみを置いて実篤は席を立ってしまう。
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