898人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ
情けないほどに心臓がバクバクしているのを感じる。
指輪を差し出している両の手が震えないよう一生懸命力を込めてはいるけれど、その努力がくるみに気付かれていないだろうか?
そんな思いにぐるぐると支配されながら、実篤はうつむいたままのくるみの顔をじっと見上げ続ける。
片ひざをついた、このいかにもプロポーズをしていますと言う王子様然とした自分の格好が、強面な面貌とは余りにも不釣り合いな気がして……今にも顔から火が出そうなぐらい恥ずかしくて。
くるみが実篤の言葉に「はい……、喜んで。よろしくお願いします」とうなずいてくれるまで、実際はほんの数秒だったにも関わらず、走馬灯と言うのはこういう風に瞬時に駆け巡るのだと身をもって実感した実篤だ。
走馬灯を見たと言っても、別に今際の際なわけではないのだけれど、瀕死の状態に近かったことは否めない。
「くるみちゃ……」
ホッと気が抜けて実篤がその場にへたり込んだのと、周りから「わぁー」と言う歓声とともに「おめでとう!」と拍手がわき起こったのとがほぼ同時で。
実篤はどれだけ自分たちがこの店内で目立つ行動をしていたのかを今更のように思い知った。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
エッセイに今回のプロポーズに関するちょっとした裏話(https://estar.jp/novels/25912145/viewer?page=703)を書いています♥
もし気になられましたら。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
最初のコメントを投稿しよう!