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くるみに結婚の申し入れをして……それを受け入れてもらえた実篤は、その日の夜すぐ、興奮冷めやらぬまま両親にその旨を報告した。
今更「会わせたい女の子がおるんよ」と言うのも白々しいと思ってしまうのは、年末年始にくるみがすっかり栗野家の面々に馴染んでしまっていたからに他ならない。
「今日ね、俺、くるみちゃんにプロポーズしたんよ」
電話越し、ごくごく短く事実を告げたら、母・鈴子が電話先で引き攣れたように息を呑む気配がした。
『ちょ、ちょっと待っちょりんちゃい』
その声と共に『お父さぁ~ん実篤がぁ〜!』と電話を保留にもせず父・連史郎を呼ばわる声がして。
「ちょっ、母さんっ」
(べっ別に後日ちゃんとくるみちゃんと一緒に報告がてら顔見せする予定じゃし、今そんなに慌てんでもええんじゃけどね⁉︎)と妙に照れくさくなってしまった実篤だ。
***
だが、母・鈴子にだってちゃんと言い分がある。
父に似た強面でめちゃくちゃハンサム(あくまでも鈴子の主観)な長子が、その強そうな見た目とは裏腹。
誰に似たのか死ぬほど不器用でヘタレなこともよく心得ていたから。
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