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その子を連れているところを何気なく見れば、今までは半ば相手の女性に引っ張られるように付き合っているようにしか見えなかった実篤が、今回の彼女に対してはやけに積極的に見えたのには連史郎と二人、目を瞠らされたものだ。
確かにお相手の木下くるみという女の子。
末っ娘の鏡花と同い年で実篤とは七歳差と少し年齢差があるのが気にはなったけれど、とても人懐っこくて器量も飛び切り良いお嬢さんだった。
この子ったら父親の要領の良さは受け継がなかったのに〝面食い〟のところだけはしっかり受け継いでしまったのね、と溜め息が出そうになって。
(あら私ったら自意識過剰ね)
と思わず忍び笑いが漏れた鈴子だ。
実は鈴子。
今でも十分綺麗な顔立ちをしているけれど、若い頃はミス何とかにアレコレ選ばれるような美貌の持ち主だった。
だが、その見目麗しさに惹かれてチヤホヤと言い寄ってくる、いわゆる〝イケメン〟と言うものには全く興味が湧かなくて。
パッと見ムスッとして見えた、他者に言わせれば強面の不動産屋の男に一目惚れしてしまったのだ。
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