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そんなこんなで電話の向こう。
両親がわちゃわちゃしてしまうのも無理はないのだが、実篤としては自分がそこまで彼らに心配されているだなんて思っていない。
それで必然的。双方の間にはどうしたって温度差が生じて――。
「なぁ、母さんっ! そんなに慌てんでもまた日ぃ改めてくるみちゃんと広島行くけん! ――おーい! 聞こえちょるかー!? ……だからねっ、別に今すぐ親父と変わらんでもええんじゃけど……!」
ちょっと声を大きめにして。母親が受話器を耳に当てていなくても聞こえるよう喚いてみた実篤だったのだけれど。
『おお! 実篤かぁっ! お前、くるみちゃんに結婚申し込んだっちゅーんはホンマかぁ⁉︎』
声を張り上げている実篤の声をかき消さんばかりの大声でいきなり。父・連史郎が応答してきたから、耳がキーンとなってしまった。
「ちょっ、親父! 声デケぇわ!」
無意識にスマートフォンを耳から遠ざけながら言ったら、『お前じゃって今、凄いデカイ声で叫びよっじゃろーに。わしだけ責めるんはおかしいで?』とか至極もっともな抗議をされてしまう。
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