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実篤は「くるみちゃん、笑いすぎ……」とつぶやいて小さく吐息を落とした。
くるみはそんな実篤の腕にそっと触れて「ごめんなさい」と謝ってはみたものの、やはりこらえきれないみたいに慌ててそっぽを向いて肩を震わせる。
その左手薬指にきらりと光る指輪を見て、実篤は切り出すなら今しかないと思ったのだ。
「ねぇ、くるみ。そんだけ笑ったんじゃけ、俺がヘタレじゃないって証明するんにも、もちろん協力してくれるいね?」
身体を屈めるようにしてくるみの耳元でわざと彼女を呼び捨てにして声を低めれば、くるみが真っ赤になって耳を押さえた。
その様が可愛くてふっと笑うと、実篤は満足して続ける。
「仕事が落ち着いたらさ、なるべく早めに親への報告がてら挨拶とか済ませたいんじゃけど……どうじゃろ?」
実篤の提案にくるみが照れ臭そうにコクッとうなずくのと、「あのぉー、辛子高菜パンとカボチャあんぱんを一つずつお願いします」と注文が入るのとがほぼ同時で。
くるみが気持ちを切り替えるみたいに元気よく「はーい」と答えて、この話は一旦終了になった。
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