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「俺はくるみちゃんと住めるんじゃったらどこでもええと思うちょる」
両親や弟妹には家を守れなくてすまないという思いは無きにしも非ずだけれど、例え実家を捨てることになったとしてもくるみに寄り添いたいと思っている実篤だ。
くるみにはまだ話していなかったけれど、家でパンを焼いている彼女と違って、自分は家でどうこうする仕事ではない。
ならばくるみの実家に自分が移り住む形が一番スマートなのではないかとずっと思っていた。
もしくは――。
「なぁ実篤よ。お前、不動産屋の経営者らしく中心部の方へ良い物件見つけて新たに居を構えようとは思わんのか?」
連史郎に言われるまでもなく、実篤だってそれも考えなかったわけではない。
だが――。
「しても……ええんか?」
実家を置き去りにして、くるみの家へ住まうことになるかも知れないと言う構想に関してでさえ、実篤は家族に対して跡取り息子としての後ろめたさが拭えないのだ。
ましてやそれを新たに不動産を取得する形で新居を建ててもいいものだろうか?という思いがずっとあって。
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