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「うち、お団子を作ろうかと思うちょるんです。――それで、あのっ、もし良かったら食べにいらっしゃいませんか?」
クリノ不動産も、くるみの木も、水曜日がたまたま定休日で、火曜の夜ならお互いに少々夜更かししても問題ない。
それもあってだろうか。
憎からず想っているくるみからのいきなりのお誘いに、実篤は何と答えたらいいのか戸惑ってしまう。
その間が苦しいみたいに、くるみがいそいそと取り繕うように更に言い募った。
「あ、あのっ。実は贔屓にしちょる業者さんから良い団子粉をお試しで貰ぉーたんです。せっかくじゃけぇ使ぉーてみたいんですけど……ひとりで食べるんは寂しいなぁ〜思ぉーて」
言われて、くるみが大学を卒業して程なくして両親を事故で一気に亡くしたのだと話してくれたのを思い出した実篤だ。
寂しいと言われた途端、「くるみちゃんさえ迷惑じゃないんじゃったら、俺は逆に大歓迎じゃわ」と身を乗り出していた。
実篤がくるみに抱いている気持ちと、くるみが実篤に対して持っている感情は、似て非なる物なのかもしれない。
だけど――。
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