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移動販売の手伝いにしてもそうだけれど、真剣にパン屋業を頑張るくるみを、実篤は色んな形で支えたいと常日頃から思っている。
だから例え苦手な甘いものを食べなくてはいけないとしても、くるみの試作に付き合うことに対して、苦痛なんて感じたことはない実篤だ。
だが、くるみとしては申し訳なさがどうしても拭えないらしい。
シュンと萎れるくるみに、
「俺、くるみちゃんの家族になりたいって言うたじゃん? 亡くなったくるみちゃんのご両親だって、くるみちゃんがこうやって作った試作品、喜んで食べてくれよったんじゃないん?」
自信満々に言ったら、くるみがコクッとうなずいて瞳を潤ませる。
実篤はくるみの小さな身体をギュウッと腕の中に抱き締めると、「俺も同じ気持ちよ?」と彼女の柔らかい髪の毛に口付けを落とした。
きっと両親を亡くして以来、実篤が知らないところで、くるみは頼れる人を見つけられないままにずっと一人で頑張って来たんだろう。
小悪魔の癖に、未だに肝心なところでは甘えるのが下手くそなくるみのことを、実篤は心の底から愛しい、守ってあげたいと思って。
「俺、くるみちゃんのためじゃったらケーキのホール食いだって余裕で出来るで?」
クスクス笑いながら言って、腕の中のくるみに、「うち、ケーキ屋さんじゃないけん」と微笑まれる。
さっきまでしょぼくれていたくるみが、ほんのちょっぴりだけど笑顔になってくれたことが実篤にはとても嬉しかった。
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