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「五月十九日はくるみちゃんの誕生日じゃん?」
三月いっぱいを目処に引っ越しラッシュもほぼ終わり、クリノ不動産の繁忙期もやっとひと段落が付いたということで、四月の月初めに広島に住む実篤の両親へ婚約のあいさつに行った二人だったけれど。
引っ越し準備もさることながら、くるみの誕生日までに結婚指輪を何とかしたいと思っている実篤だ。
彼女の誕生日を目処にしているのは、くるみに誕生日プレゼントは何がいいかと尋ねたら、実篤とペアになるリングが欲しいと言われたのがきっかけになっている。
「結婚指輪は誕生日プレゼントとは別に用意するつもりなんじゃけど……ホンマにプレゼント、ペアリングでええん?」
実篤の言葉に、くるみが慌てたようにフルフルと首を横に振ったのだ。
「うち、年明けにも実篤さんにアクセサリー買うてもろうちょります。実篤さんはあれ、クリスマスプレゼントじゃとか言うちゃったですけど……イヤリングとチョーカーをくれたけん、明らかにひとつ多いです。それに――」
そこでギュッと実篤の手を握ると、くるみが大きな目で実篤を見上げてくる。
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